インフルエンザは、インフルエンザウイルスに感染することによって起こる病気です。通常の風邪よりも急激に発症し、症状が重いのが特徴です。
インフルエンザに感染すると、1~5日の潜伏期間の後、38℃以上の高熱や筋肉痛などの全身症状が現れます。健康な人であれば、その症状が3~7日間続いた後、治癒に向かいます。
インフルエンザウイルスには強力な感染力があり、いったん流行すると、年齢や性別を問わず、多くの人に短期間で感染が広がります。日本では毎年12月~2月に流行が見られます。2009年春、いわゆる「新型インフルエンザ」が流行したことを覚えている方もおられるかもしれません。2009年に世界中で流行したいわゆる新型インフルエンザは、A型、H1N1亜型というものでした。
ヒトに感染するインフルエンザウイルスには、A型・B型・C型の3つがあり、現在流行の中心となっているのはA型とB型です。C型は鼻かぜ程度の軽い症状ですむことが多いウイルスです。
インフルエンザの予防に効果が期待できるのがワクチンの接種です。2014年まではA2価、B1価のワクチンでしたが、2015年からはA2価、B2価の計4価のワクチンになっています。抗体ができるまでに2-3週を要しますので、流行シーズンを迎える前の11月ごろまでの接種が良いでしょう。
2017年9月にワクチンという医学雑誌に妊婦さんのインフルエンザワクチンに関する論文が掲載されました。オハイオ州立大学のグループからの発表です。計141人の妊婦さんにインフルエンザワクチンを投与し、前年にワクチンを投与された群91人と、投与されていなかった群50人にわけ、ワクチンの効果を抗体価で比較しています。投与30日後では、前年にワクチンを投与されていない群の抗体価が、前年にワクチンを投与された群より高いという結果でした。
この論文をもとにインフルエンザワクチンは無効であるとか、免疫力を落とすといった考え方をする方もおられます。そしてインフルエンザワクチンは投与すべきではない、とも考えている方もおられます。しかし、少なくともこの論文の著者たちは、そのようなことを言ってはいません。出産時の抗体価、臍帯の抗体価すなわち新生児の抗体価では両群に差を認めなかったという結果をしめしています。
すべての薬剤、もちろんワクチンにも副作用のリスクはあります。しかしながら、妊婦さんがインフルエンザを発症すれば重症化のリスクがあり、また胎児に影響があること、また免疫のない新生児にも抗体ができることを考えれば、むしろ妊婦さんこそインフルエンザワクチンを投与すべきと考えます。