肺炎球菌ワクチン

健常な方が日常生活のなかで発症する肺炎を市中肺炎と言いますが、この中で最も多いのが、肺炎球菌による肺炎です。肺炎球菌は莢膜という膜に覆われており、同じ肺炎球菌でも莢膜は100種類近くあります。

現在、日本で使用できる肺炎球菌ワクチンは2つありますが、一つはこのうちの23種類をカバーし、もう一つは13種類をカバーしています。

23種類カバーするものは、23価肺炎球菌莢膜ポリサッカライドワクチンといい、商品名をニューモバックスといいます。このワクチンは不活化ワクチンです。このニューモバックスは定期接種の対象となっており、予防接種法という法律に基づき、自治体が実施する予防接種です。平成26年10月1日から平成30年までは65歳、70歳、75歳と5歳きざみで100歳までの方に定期接種することになっています。平成30年までに接種しなければ、自治体からの補助はなくなりますが、自費で接種することになります。このワクチンは摂取後5年間有効とされていますが、現在のところ定期接種は初めての方のみが対象であり、平成31年度からは65歳になった方のみが定期接種の対象となります。定期接種では自治体から補助が受けられますが、自己負担額は自治体によってさまざまで、どの自治体であっても数千円の自己負担が必要です。

もう一つのワクチンが13種類をカバーするたんぱく結合ワクチンで、商品名をプレベナーといいます。莢膜ポリサッカライドに蛋白質を結合させたもので、人に接種すると記憶免疫と呼ばれる免疫を得ることができ、強力な予防効果が期待できると言われています。2か月以上6歳未満の小児と65歳以上の成人が接種対象ですが、自治体からの補助があるのは小児のみで、65歳以上の成人は自己負担となり、1万円以上の負担となります。

米国予防接種諮問委員会ではニューモバックスとプレベナーの併用を推奨しています。併用方法はプレベナーを先に接種し、二つのワクチンを接種する間隔は1年空けるという内容になっています。ニューモバックスとプレベナーを併用するメリットとして、両方のワクチンに共通している血清型の抗体の効果が高まるブースター効果が認められています。ただし、ニューモバックスとプレベナーの併用は日本人を対象としたデータがあまりないため、高齢者に関しては、まず自治体からの助成制度のあるニューモバックスの定期接種制度を利用することを日本呼吸器学会と日本感染症学会の合同委員会は推奨しています。

現在、日本人の死因の一位は悪性新生物、いわゆるがんであり、2位が心疾患、3位が肺炎です。65歳以上では肺炎の発症率も肺炎による死亡率も急激に増加していきます。肺炎の予防はワクチンだけではありません。肺炎の原因となる微生物が体の中に入りこまないように日常生活において、うがいをする、手洗いをする、マスクをする、お口の中を清潔に保つなど、日常生活でできることもたくさんあります。

肺炎球菌ワクチンはすべての肺炎に対して予防効果があるわけではありませんし、肺炎球菌に対してもすべてをカバーしているわけではありません。また、すべてのワクチン、お薬に言えることですが、一定の割合で副作用があります。

最終的に接種するかどうかはご本人、ご家族が決めることですが、65歳以上の方は、肺炎球菌ワクチンの接種をするかどうか、特に2種類のワクチンを併用するかどうかを考えてみてください。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする