国が進める地域医療構想により、2025年には全国の病院の病床は一割以上減少します。特にがんに対する抗がん剤治療、各種手術、救急など、高度な医療をしている高度急性期、急性期病床はおよそ77万床から53万床に減少する予定です。
急性期病床が30%減少するのに全体では10%程度の減少となるのは、リハビリを中心とした回復期病床を大幅に増やすからです。しかし、回復期病床には急性期ほどの多くの医師は必要ありません。
長い間医師不足と言われてきましたが、病院に限って言えば、2025年以降は急性期の医療は30%縮小しますので、少なくとも今よりも医師が必要になることはないと予想されます。
一方国は医師不足の解消のため2008年度より連続で医学部の定員を増やしてきました。2007年度には約7500人であった医学部の定員は2017年度には新しく医学部が2つできたこともあり、およそ9200人になっています。定員が増え始めた2008年度入学の医学生が卒業したのが2014年です。医師が一人前になるには10年かかると言われていますが、2014年の卒業生が10年の経験を積んだころ、病床が減少し、医師が少なくて済むようになる2025年を迎えます。さらにそこから実働する10年以上の経験をもつ医師が増え続けることになります。
国の進める地域医療構想では、東京、埼玉、神奈川、千葉、大阪、沖縄では病床数は増えますが、その他の道府県では病床数は減少し、高齢者の医療は在宅へとシフトする構想です。そのため在宅医療、すなわち訪問診療をする医師は大幅の増やす必要がでてくることが予想されます。
急性期病床の縮小
人口の減少
高齢者医療の在宅へのシフト
若い医師の増加
により今後の医師、特に若い医師たちにとってキャリアの形成が非常に難しくなるかもしれません。
医学部を卒業し、初期研修をどこでするかからきちんとした戦略を立てることが重要になると思います。医学生や研修医は一つ先、医学生なら初期研修、初期研修医であれば後期研修までのことしか考えず進路を決定していますが、2つ先、できれば3つ先まで考える戦略が必要だと思っています。