ペストはペスト菌による感染症で、かつては高い致死率であり、罹患すると皮膚が黒くなることから黒死病と呼ばれ、恐れられていました。14世紀の大流行では1億人の死者を出したとも言われています。
ペストは症状や感染経路で、腺ペストと肺ペスト、敗血症型ペストに分けられます。
腺ペストは菌を保有するネズミなどのげっ歯類からノミを介して感染し、リンパ節炎、敗血症等を起こし、重症例では高熱、意識障害などがみられます。
肺ペストでは咳などによる飛沫感染でヒトからヒトに感染します。高熱、急激な呼吸困難や咳、鮮やかな赤い色の泡立った血が混じった痰を伴う重い肺炎、強烈な頭痛、嘔吐などの症状があり、発症から24時間以内に致命的となる可能性があります。
敗血症型は局所症状がないまま全身に伝播して敗血症を引き起こします。臨床症状としては急激なショック症状、および昏睡、手足の壊死、紫斑などが現れ、その後、通常2~3日以内に死亡します。
2017年8月からアフリカマダガスカルで前例のないペストの流行がありました。2017年8月1日から11月24日までに、マダガスカル114郡のうちの57郡(50%)で、感染の確定患者、可能性の高い患者、疑い患者が合せて2,384人が報告されました。死亡者は207人(致死率9%)となりました。流行が始まって以降、膨大な数の患者が治療を受けました。
マダガスカル保健省は、11月25日に、都市型の肺ペストを封じ込めたことを、公式に発表しました。しかし、マダガスカル中央部には、ペストが常在しており、ペストの流行期が9月から4月までは続くことから、2018年4月までは、注意が必要であるとしています。
ペストの予防としては
患者やネズミ、犬、ねこのような動物の体液や排泄物への接触を避ける。
肌の露出を避け、虫除けを使う。
肺ペスト流行地では人込みを避け、医療機関などでは必要に応じマスクを着用する。
肺ペストが疑われる患者と濃厚接触した場合には抗菌薬の予防内服が勧められる。1週間は体温の測定をして高熱が出た場合には速やかに医療機関を受診する
などがあります。
治療としては抗菌薬による治療があります。(特に肺ペストでは早期治療が重要)。
抗菌薬はストレプトマイシン、ゲンタマイシンといったアミノグリコシド系、ドキシサイクリンのようなテトラサイクリン系、レボフロキサシシン、シプロフロキサシンといったキノロン系抗菌薬などが用いられます。
ペストのようにまだまだ世界では日本ではほぼ感染リスクのない感染症のリスクがある場合があります。海外渡航の際には渡航地で流行している感染症を把握し、適切なワクチン接種、予防投与といった準備をすることが大切です。