ジカウイルス感染症

ジカウイルスは、ヤブカ属の蚊によって媒介されるジカウイルスによる感染症です。やぶ蚊にはネッタイシマカとヒトスジシマカがありますが、日本ではヒトスジシマカが北海道を除く全土に生息しています。ジカウイルスはデングウイルスと同じフラビウイルス科に属し、症状はデング熱に類似しますが、デング熱よりは軽いと言われています。ジカウイルス感染症は当初ジカ熱と言われていましたが、症状としてあまり高熱を認めないため、現在ではジカウイルス感染症と言われることが多くなっています。

ジカウイルスは1947年にウガンダのZika forest(ジカ森林)で、アメリカの研究機関で管理されていたアカゲザルから初めて分離されました。ヒトからは1968年にナイジェリアで行われた研究の中で分離されました。

ジカウイルスは長い間注目を集めることはありませんでしたが、2007年にはミクロネシア連邦のヤップ島での流行がありました。2013年にはフランス領ポリネシアで約1万人の感染が報告されましたが、一部では3万人以上の感染者がいたのではないかとも言われています。

そして本当にジカウイルス感染症が注目されたのは2015年からです。ブラジルのジカ熱流行地域であるペルナンブコ州で小頭症の子供が通常の75倍生まれたことで、ジカウイルス感染症は小頭症との関連が疑われ注目を集めるようになりました。

世界保健機関WHOは2016年2月1日、「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を宣言しました。日本では2016年2月15日より、診断した医師が保健所に報告義務のある感染症法の4類に指定されました。

症状としては発熱、頭痛、関節痛、結膜充血、皮疹が高頻度に認められ、通常は3日から12日間持続します。発熱はデング熱に比べて高くならないことも多く、臨床症状も全般にデング熱より軽度ですが、結膜充血の頻度はデング熱やチクングニア熱より高く、皮疹は通常頚部から四肢に拡がり、発症早期からの出現が多いとされています。 デング熱では、出血を止めるための血球である血小板が減少し、出血してしまう場合や、命にかかわる場合もありますが、ジカウイルス感染症ではそのような報告はほとんどありません。またデング熱では血清型が4種類あり、血清型の違う2回目の感染を起こした場合には重症化すると考えられていますが、ジカウイルスでは血清型は1種類であり、2回目の感染で重症化するという報告もありません。

全体に症状が軽いため、不顕性感染と言って気が付かないうちに感染していることも80%前後あると言われています。神経障害により四肢が動かなくなるギランバレー症候群や髄膜炎の合併例も報告されていますが、その頻度は低いと報告されています。

それでも世界中から注目されているのは妊婦さんがジカウイルスに感染した場合、小頭症の子供が生まれる可能性があるからです。

これまでの調査によると、妊婦さんが、特に妊娠初期にジカウイルスに感染した場合、小頭症の子供が生まれる確率は1%前後と言われていますが、もしも大流行が起これば、感染する妊婦さんが多くなり、たくさんの小頭症児が生まれてくることになります。また、ジカウイルス感染症は症状が軽度であるため、妊婦さんご自身が感染に気付かない可能性もあります。

対策としては、妊婦さんはもちろん、妊娠を予定している方は中南米、東南アジアといったジカ流行地域には行かないことです。また、行く場合には長袖、長ズボンを着用し蚊に刺されないようにすることです。

防虫剤を使用することも大切です。DEETを20%以上含有しているものが望ましいとされており、すでに30%含有のものも販売されていますが、皮膚刺激症状などがあります。皮膚刺激の少ないイカリジン含有防虫剤も使用されています。

このように防蚊対策をきちんとして蚊に刺されないようにすることが大切です。

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