アニサキス

有名人の何人かがアニサキスに感染し、そのことをツイッターでつぶやいたり、テレビで話したりしているのでお聞きになった方もおられるかもしれません。

アニサキスは寄生虫の一種で、生魚に幼虫が寄生し、これを食べることで食中毒を起こします。アニサキス幼虫は、長さ2~3 cm、幅は0.5~1 mmくらいで、白色の少し太い糸のように見えます。

アニサキス幼虫はサバ、イワシ、カツオ、サケ、イカ、サンマ、アジなどの魚介類に寄生します。海産魚介類の生食を原因とする寄生虫症の中でも,我が国で最も多発するものがアニサキス症です。刺身やすしを好む日本人の食習慣からみて,アニサキス症は我が国でかなり古くからあった病気と考えられますが、原因となる寄生虫が確定されたのは1960年代です。ほとんどの場合胃の壁に侵入することで上腹部に激痛があり、一般的に食中毒の症状と考えられている嘔気嘔吐や下痢などが見られることは稀です。

治療としては上部消化管内視鏡で直接アニサキスをつまんで取り出します。除去した後は嘘のように症状は治まります。まれに腸管壁で同様な症状を起こすことや、アレルギー症状を起こすことがあります。

アニサキスは2012年末に食中毒として届け出が必要な疾患となり、徐々に届け出件数が増加しています。2016年には全国で120人程度であった届け出は、2017年にはおよそ240人と倍になっています。これは医療者側も患者さん側もアニサキスを食中毒と認識し、届け出数が増加している可能性が考えらえます。

また、魚介類の内臓に寄生しているアニサキス幼虫は鮮度が落ちると、内臓から筋肉に移動することが知られています。アニサキスによる食中毒を防ぐためには魚が新鮮なうちに内臓を取り出し、アニサキスが魚の筋肉に移動しないようにしなければいけません。現在は流通の変化、すなわち市場を通さず、産地から直接小売店に魚が運ばれ、適切な内臓除去がされない可能性も指摘されています。

アニサキスは-20℃で24時間以上冷凍すれば死滅するともいわれており、この処置がしっかりとなされていない可能性もあります。醤油,わさび,酢がアニサキス症の予防に有効ではないかと期待されてきましたが、料理で使う程度の量や濃度,処理の時間ではアニサキスは死なないとされています。

すなわち販売側の処理が重要で消費者側にできる注意は少ないのですが、生魚を食べたあとに上腹部に激痛があれば上部消化管内視鏡が出来る医療機関を受診することが大切です。

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