敗血症

2016年2月22日、第45回米国集中治療医学会(SCCM)において敗血症および敗血症性ショックの国際コンセンサス定義第3版、sepsis-3が発表され、敗血症 (sepsis) の定義は2001年以来15年ぶりに大きく改定されました

敗血症は「感染症に対する制御不能な宿主反応に起因した生命を脅かす臓器障害」と定義されこの内容はJAMA誌にも同時掲載されました。

このsepsis-3の発表からおよそ2年が経ち、sepsis3も臨床現場に広く浸透するようになってきました。

新定義診断基準のポイントとして、重症敗血症 (severe sepsis) と言う用語がなくなりました。これにより敗血症 (sepsis) と敗血症性ショック (septic shock) の2段階にのみ分類することになりシンプルになりました。

また、敗血症診断基準へのSOFAスコアが導入されました。SOFAスコアとは臓器障害を簡便にスコア化することを目的に作成されたスコアリングシステムでsequential Organ Failure Assesmentの略称で、呼吸、凝固、肝機能、心血管、中枢神経、腎機能の6項目についてそれぞれ0から4点でスコアリングを行い、その点数を合計します。SOFAスコアは、今日のICUでは主に研究目的として臓器障害のスコアリングシステムとして世界的に広く使われているもので新診断基準ではこのSOFAスコアが採用されました。新診断基準の作成においては生命を脅かす臓器障害と言う定義を反映したと言う意図があり、院内の死亡率の高さと関連する臓器障害の項目に注目して大規模症例登録データベースを利用して検証研究が行われました。その結果死亡リスクを評価するための臓器障害評価にはSOFAスコアが最適であると言う結論になりました。またSOFAスコアの2点以上の増加で院内死亡率が約10%増加することを根拠として敗血症の診断基準はSOFAスコアのベースラインから2点以上の増加で感染症が疑われる者と決められました。

さらにICU以外でのquick SOFAスコアも採用されました。SOFAスコアは臓器障害を簡便にスコアリングし記述できるツールとしてICU内の患者を対象に作成されたものでした。このためICU以外でこの診断基準を用いることが妥当であるか否か不明で、さらにSOFAスコアを正確に測定するには動脈血ガス分析を含めた血液検査が必要となり、ソファスコアを使用する事はICU以外で迅速に敗血症を認識することには適していないと考えられました。そこでSOFAスコアをつけることが困難と想定される場所、例えば救急外来、一般病棟なので敗血症疑うためのより簡便なツールとして考案されたのがquick SOFAスコアです。呼吸数が1分間に22回以上、グラスゴーコーマスケール (GCS) 15未満、すなわち意識レベルの変化があり、収縮期血圧100 mmHg以下の3項目より構成されており、この組み合わせこれらのうち2項目以上を満たしている、すなわちqSOFAスコアが2点以上であれば積極的に敗血症を疑い臓器障害の評価を行うことが推奨されています。

敗血症性ショックに関しては、十分な輸液負荷にもかかわらず平均動脈圧65 mmHg未満、血清乳酸値が2 mmol/Lより高値、血管作動薬の使用の3項目を満たすことが敗血症性ショックの定義となりました。

新しい敗血症の診断基準であるsepsis-3は臨床現場において広く普及してきましたが、感染症であることを疑うことが何よりも重要で、そのうえでqSOFA、SOFAを用いて正しく評価することが重要と考えられます。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする