マラリア

マラリアは熱帯から亜熱帯に広く分布する原虫感染症で、高熱や頭痛などの症状があります。重症のものでは脳マラリアによる意識障害や腎不全などを起こし死亡することもあります。2013年のデータでは全世界で1.98億人が感染し、このうち58.4万人が死亡しています。病原体はマラリア原虫で、ハマダラカによって媒介されます。マラリアには三日熱マラリア、四日熱マラリア、卵形マラリア、熱帯熱マラリアがあります。

マラリアを発症すると、40度近くの高熱をみとめますが、三日熱マラリアの場合48時間おきに、四日熱マラリアの場合72時間おきに、繰り返し激しい高熱を認めます。これが三日熱、四日熱と呼ばれる所以です。卵形マラリアは三日熱マラリアとほぼ同じで50時間おきに発熱します。熱帯熱マラリアの場合には周期性は薄いとされています。

診断は血液をギムザ染色という染色法で染め、赤血球内にマラリア原虫を見ることでします。健康保険では認められていませんが、迅速キットでマラリアの抗原や抗体を検出することもできます。

マラリアは予防可能、治療可能な病気です。

アフリカ、東南アジア、インドなどマラリア流行地域に旅行する場合には予防内服をすることができます。予防内服には3種類があります。もしもマラリア流行地域に2週間滞在予定だとします。メファキンというお薬の場合、渡航の1-2週間前に1錠服用開始し、1週間に1錠内服、計8錠内服します。マラロンの場合、渡航の1-2日前に内服を開始し、毎日1錠、帰国から1週間後まで計22日間、22錠内服します。ドキシサイクリンというテトラサイクリン系の抗菌薬のの場合、渡航の1-2日前から内服開始、1日1錠、帰国から4週間、計44日、44錠内服します。メファキン8錠で約7000円、マラロン22錠で11000円、ドキシサイクリン44錠で約1000円の費用がかかります。

三日熱マラリア、卵形マラリア、4日熱マラリアの治療ではリアメット、マラロン、メファキンなどで治療をします。三日熱マラリア、卵形マラリアでは再発予防にプリマキンを内服します。プリマキンは他の抗マラリア剤による治療の後、肝細胞中に残存する休眠原虫を駆除する根治治療薬です。

熱帯熱マラリアは重症化の可能性が高く、早急な治療開始が必要です。キニーネという注射薬が必要ですが、日本においては未承認で、熱帯病治療薬研究班で研究として使用できる医療機関が全国に31施設あり、これら医療機関での治療が必要です。

日本国内のマラリアの発症は年間約100例あり、熱帯熱マラリアでは死亡例も認めています。マラリア流行地に行かれる場合は予防内服、防蚊対策をご考慮下さい。

また、帰国後発熱等の症状ある場合には早めの医療機関の受診をお勧めしますが、輸入感染症は医療者側が疑って検査をするかどうかが非常に重要であるため、海外渡航歴をお話いただくようお願いします。

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